今月、某銀行の顧客向けセミナーで、「経営理念/行動指針の策定と定着手法」についての講義を行い、40名強の経営者の皆様とディスカッションを行いました。(オンラインでしたが…)
以下、その時に出た意見のまとめと感想を記します。
【経営理念等の制定状況】
多くの企業が経営理念等をすでに制定しているようです。代替わり、企業買収による業務の拡張などのタイミングで内容を見直しているという企業も多く見られました。
【経営理念に関する悩み】
社員に浸透しているか…という悩みが圧倒的に多いようです。額ぶち的な存在でお飾りになっている、朝礼などで唱和をしても表面的、言葉が古臭くわかりづらいため浸透しない など。
議論の中で、「いかに社員が『言葉』を『行動』に繋げてイメージできるか…」という意見に、多くの方が共感を示していました。具体的なお話として、
「年代の差によって、言葉に対する感覚の違いが出ている(若者がイメージできない)」
「事業の多角化により業務に直結した表現ができなくなり、具体的だった言葉が抽象化されてわかりづらくなった(例えば「住まい」→「元気な街」など、ビッグワード化されてイメージしづらくなる)」
「想いが強く、こだわりがある職人が「自分たちの仕事はこうあるべき」という解釈を押し付け、若者たちの価値観ではピンと来ない…という状況に陥っている」
シンプルで抽象的な言葉をいかに具体的な社員の行動に直結させてイメージしてもらうか、が大事ということです。しかも押し付け的でなく、社員一人ひとりが考えることが重要ですね。
裏付けとして、労務行政研究所の2017年の調査データによると「理念の社員への浸透につながる取組」の上位にあるのは、圧倒的に「理念教育」だそうです。朝礼唱和や理念カードの配布だけでなく、あらためて理念の解釈を時間をかけて話し合うことが、一人ひとりの「腹落ち」に繋がることは間違いないと思います。
【経営理念浸透のための好事例】
「社長と社員の定期的な懇談会を実施しており、その場で理念について話し合っている(お酒を交えて)」
「経営中長期計画を策定する際に、理念を見直し、それをベースに具体化、経営戦略と理念を結びつけている(理念と社員の行動計画がマッチ)」
「業務上で判断に迷った時、カードに書かれている理念や行動指針を見ながら話し合うようにしている」
多くの好事例に触れることもでき、有意義なセミナーになりました。
ダイバーシティの進行などで価値観が多様化している時代だからこそ、理念を大事にし、一人ひとりがジブンゴトとして捉え、行動していくことが重要であるとあらためて感じました。(本間)